沖縄の新しい農作物その3: バニラ

バニラビーンズとは、ラン科バニラ属の蔓植物の実で、これを原料として抽出されるのが甘い香りのバニラと呼ばれる香料です。

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バニラのさや(バニラビーンズ)。バニラはラン科の植物です。

バニラの原産地は中央アメリカで、16世紀にスペイン人の征服者エルナン・コルテスがヨーロッパに伝えたと言われています。19世紀まではメキシコがバニラ取引を独占していましたが、19世紀の半ばにフランス領のレユニオン島で人の手で授粉させる技術が完成し、メキシコ以外の土地でも、バニラの商業栽培が行われるようになりました。

現在、世界の市場に出回るバニラのうち約8割はインド洋に浮かぶ島マダガスカルで生産されています。アジアでは、インドネシアが主要な栽培地として知られています。

バニラビーンズの価格はここ数年高騰していて、2019年の価格は1キロ520ドル(6万円弱)。マダガスカル産のバニラは質が高いことで有名ですが、国内の菓子材料の通販では、50グラムで1万円を超える価格で販売されています。とても高価なため、関心も高まっています。

バニラビーンズは、樹上で数ヶ月完熟させた後、キュアリングと呼ばれる加工によって、さやの発酵、乾燥を促し、水分を飛ばしてバニラ独特の香りが出るようにします。キュアリングの過程には産地ならではの技術的ノウハウがあるようです。

さて、日本国内でのバニラの状況ですが、九州の久留米バニラが有名です。この久留米バニラの原料として、沖縄の農場からもバニラビーンズのさやが出荷されています。

さて、沖縄でも本格的にバニラの栽培から加工、製品化に取り組んでいる人たちがいます。

私たちは、2019年7月、読谷村座喜味にある「蘭ファーム・ナガハマ」の長浜真俊さんのバニラ農場を訪問させていただき、お話を伺いました。

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蘭ファーム・ナガハマの長浜さん。

長浜さんは本業とは別に、趣味で蘭を栽培していたそうです。バニラの栽培を始めたきかっけは、糸満の蘭協会からバニラの苗をもらったこと。

2015年に読谷村のハウスで本格的な栽培を始め、現在では814本のバニラを栽培しています。

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アーチ型の構造の中にバニラのつるが整然と並んでいます。

実がついたのは去年から。今年の2月には1万本を収穫することができました。
樹上で完熟させたバニラビーンズを収穫後、数ヶ月かけて発酵、乾燥させるキュアリングを行っています。

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美しくつやのあるバニラのさや。

訪問した時期には1カ月ごとにバニラがどのように変化するのか、琉球大学の研究者の協力を得て分析を行っているとのことでした。

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キュアリングの実験中のバニラビーンズ。

バニラはハウスの中で栽培する限り、消毒もいらず、それほど手間はかからないそうです。

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整然と栽培されているバニラ。

一番忙しいのは5月のゴールデンウィーク明けの1ヶ月。バニラの花が開花する時期で、花が午前中に一斉に開花し、午後にはしぼんでしまうため、急いで受粉させる作業を行わなくてはなりません。1ヶ月間、ほぼ休みなしで受粉の作業に取り組むそうです。

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香りをかいでみているところ。

「来年はぜひ手伝いに来てね!」と言われました。

バニラビーンズの熟成については試行錯誤中で、まだまだということですが、バニラが沖縄の名産になるようにがんばりたいとのことでした。

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とびきり甘い香りのバニラビーンズになりますよう・・たのしみです。

甘い香りの沖縄産バニラのアイスクリームやプリンを楽しみにしています!
長浜さん、ありがとうございました。

担当:まきの
編集:O

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