伝統の味。首里餅菓子屋。

DSC_0068
行事やお盆の時には行列ができる人気店。

 創業63年の歴史を持つ首里餅菓子屋の代表者で2代目の西原清次郎さんにお会いしてお話を聞かせていただいた。

 西原さんは、母・秋さんが亡くなった後、店を継承された。

「それまで銀行に40年間おりましたよ」

とのこと。ご両親には銀行に勤めてからも、家業を継いでくれるように懇願されていたそうだ。ご両親は常日頃から餅を作ることに大変喜びを感じておられ、

「おいしい餅を多くの人々に食べていただき、沖縄の行事を楽しく、喜んで、ご先祖様を敬い、大事に継承して欲しい」

という気持ちを聞かされていた。西原さんもその気持を汲んで、店を引継がれたようだ。

 西原さんのモットーは

「安く、おいしく、楽しく、喜んで沖縄の行事をサポートすること」

と、微笑んでおられた。

 お餅も、ご両親は当初白いお餅一種類でスタートしたが、その後、

「母の研究の積み重ねで、黒糖餅、菱餅、ナットウみそ餅等、そして人気No1のヨモギ餅も開発されたのです」

とのこと。亡き母に敬意を抱かれたそうだ。

DSC_0076
2代目の西原清次郎さん。

 現在、商品の種類は多い。1月は鏡餅、ナットウみそ餅、3月はひな祭りで菱餅、桜餅、4月は入学祝、合格祝い等で紅白のお餅、9月は十五夜のお月見でフチャギ餅、12月はカーサ餅(鬼餅)が並ぶ。お休みはお正月とお盆にあるが、注文が入ればお店は閉めていても工場で作っていることもある。朝の3時から親族等10名で仕込みが始まり、7時には店に出す。

 お餅は生き物で、気温や、寒さ、暑さにも敏感で、水かげんや、練り具会いにも微妙な調整が必要だと言う。機械のみでできる業ではないことがうなずける。

 それ故か、とても美味しい。耳たぶのような柔らかさで、小豆餡のほどよい甘さ加減、ヨモギ餅やカーサ餅(月桃の葉で包んだ餅)の独特の香りを楽しみながら食べてみてほしい。店頭に常時並んでいるのは、白餅、ヨモギ餅、黒糖餅、ピンク餅で、どれも1個90円(税込)。その他、お線香、白紙、蝋燭、打紙(ご先祖様の紙のお金)、法事や祝事用の重箱、盛菓子、折弁当等は他の業者さんと提携し、お客様の要望に備えているそうだ。拝みの仕方の本も置かれていた。

DSC_0070
拝みの際にそなえられる3段の「ウチャヌク餅」。

 西原さんは、1男3女の父。経理を担当する奥様の淳子さんは、縁の下の力持ちです、と言われていた。ご長男は修行中。親族で両親の残したものを守り、沖縄文化を支援するために頑張ります、と接客しながら話されていた。

 頑張っている皆さんのご健康とご繁栄を心から祈りたい。

本店、工場:浦添市前田1336-3、電話 098-876-0891

儀保店:那覇市首里儀保町1-27-3 電話 098-884-0891

栄町店:那覇市安里388(栄町市場内)電話 098-886-3630

翁長商店:那覇市場の水上店舗 電話 098-868-7353

取材、文:さっちゃん