与座ガーと嘉手志ガー:糸満の湧泉

【那覇周辺360度カメラお散歩シリーズその3】は、糸満の湧泉、与座川(ガー)と嘉手志川(ガー)です。

与座ガー

与座ガー

糸満市与座という集落の西側に、1日の湧水量約2500トンが切れ目なく湧き出ている水源が存在します。

まずは与座ガーのバーチャルツアーから。360度カメラで撮影しました。

与座ガーは、糸満南部の丘陵地帯の石灰岩層から湧き出している水源です。
三山時代、お墓を作ろうとしていた時に偶然発見されたと言われています。
琉球王府時代に湧出口から石造の水路を整備されました。
大正時代初期には製糖用の水車が置かれ戦前まで利用されていました。昔はサトウキビを収穫すると、牛に引かせて砂糖(サーター)車を回し、汁を絞るのが普通でしたが、与座では水力を使って車を回していたとのことです。
太平洋戦争後はアメリカ軍の水源地「ワーラーポイント」(水揚場。ワーラー、という音が実にアメリカ英語らしい)として利用され、住民は立ち入ることができなかったそうです。
その後、約30年におよぶ水源地解放運動によって与座区の人々に返還されました。
参考:沖縄文化遺産デジタルアーカイブ 沖縄の水源 与座ガー  https://digitalarchiveproject.jp/information/%e6%b2%96%e7%b8%84%e3%81%ae%e6%b0%b4%e6%ba%90%ef%bc%9a%e4%b8%8e%e5%ba%a7%e3%82%ac%e3%83%bc/


与座ガーは昔からどのような日照りでも枯れることはないと言われていましたが、現在も驚くほど豊富な水量の水源で、農業用水として利用されています。
区民による五穀豊穣や子孫繁栄などを祈る行事なども行われているそうです。
平成16年には集落地域整備事業「ヨザガー公園整備」が行われ、親水公園となりました。
記念として製糖用水車の模型が設置されています。
与座地域の飲料用、農業用の給水場、手洗い場、農作物の泥落としに使われるほか、子供用の小さなプールや滝などがあり、地元の人々に親しまれています。

サトウキビの苗が水につけられている風景

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嘉手志ガー
 
与座ガーから車で約2分、同じ糸満市内の大里という集落には嘉手志ガーと呼ばれる湧水があります。

嘉手志ガーで遊ぶこどもたち。

嘉手志ガーのバーチャルツアーはこちら。

三山時代、沖縄本島南部では南山が栄えましたが、この嘉手志ガーが水源として重要な存在で、「水の国(みじぐに)」とも呼ばれたそうです。
地元では大川(ウフガー)と呼ばれてきました。
こちらの湧水もとても豊富で、現在も生活用水や農業用水として利用されています。
与座ガー同様に、湧水をせき止めた天然のプールは夏の間、子供たちの絶好の水遊び場になっています。
地元の大里自治会が周辺の美化保護活動を行っているそうです。
参考:ニッポン旅マガジン 嘉手志川
https://tabi-mag.jp/on0156/

長い歴史のある湧水をこれからも大切にしていきたいですね。


 
参考文献
・糸満市史–村落資料–旧高嶺村編 2013年
・懐かしき沖縄~山崎正薫らが歩いた昭和初期の原風景~ 琉球新報社 2000年

担当:上原
編集:O

大山の田芋畑

【那覇周辺360度カメラお散歩シリーズその2】 は、宜野湾市大山の田芋畑です。

田芋は、沖縄で伝統的に食されてきた里芋の一種で、稲のように水田で栽培されます。

稲よりも早く伝来した作物であることから、正月、お盆などの伝統行事に欠かせない食材となっています。

宜野湾市大山の田芋畑は、国道58号線と宜野湾バイパスに挟まれた崖下の平地で、南北1.5kmに広がっています。

戦前は那覇への水源として使われてきたほど水量の豊富な湧水があり、稲が栽培されていた時期もありますが、1960年代後半から田芋の生産地として知られるようになりました。現在も県内では金武町と並ぶ田芋の生産地です。

水田は湿地環境でもあることから、市街地に近いながらも様々な絶滅危惧種の生物が確認されており、貴重な生態系を残す場所でもあります。

360度カメラで撮影したVRツアーをご覧ください。


大山の湧水

ただ、最近は周辺に大規模なマンション等が建ち始めて湧水に影響が出ているとのことです。3箇所ある湧水のうち、1箇所は水が出ていませんでした。近年は高齢化が進んだこと等で、畑の耕作放棄が増えているようです。都市計画上も市街化区域となっているため、次第に住宅地に変わってゆくのでしょうか。

2022年5月の沖縄タイムスの記事に田芋畑の現状が紹介されています。

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/966243

青々とした田芋畑が広がる風景が失われるのは残念ですね。

担当:濱村

編集:O

カーミージー:浦添パルコシティ近くの小さな自然海岸

【那覇周辺360度カメラお散歩シリーズ 】Gopro Maxの360度カメラ、Thinglinkというプラットフォームを使って那覇周辺のちょっとおもしろい場所を紹介していきます。まず最初は浦添市のカーミージから。

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買い物客でにぎわう浦添パルコシティ。その目の前に広がる浦添市西海岸沿いには、うつくしいサンゴ礁の海が広がっています。
中でも特にきれいな風景が見られるのは、浦添市で唯一の天然ビーチであるカーミージーです。


カーミージーとは沖縄の方言で「カーミー」は亀、「ジー」は岩礁、瀬を意味しています。サンゴ礁の岩の形が亀の伏せたような姿にみえることから、カーミージー(亀瀬)と呼ばれています。

まずはカーミージーのバーチャルツアーをつくってみたので、360度の風景をお楽しみください。画面のタグをクリックするとその場所の360度風景が見られます。つづいて→をクリックすると、次の場面に進んでいくことができます。


カーミージーは、沖縄県民にもそれほど知られておらず、これまで穴場といわれるようなスポットでした。
しかし、現在では近くにパルコシティーができたこと、2018年に浦添八景に登録されたことから、以前よりも認知されるようになってきました。

カーミージーの名前の由来であり、ビーチのシンボルである岩は、昔から人々が大切にしてきた神聖な場所であり、かつ生活の場所でもありました。以前は岩の上に拝所が設置されていましたが、現在は浦添市が管理しており、拝所の位置は移動され、岩の上に登ることはできなくなりました。岩はパワースポットのような場所でもあるようです。

カーミージー付近の海はイノー(サンゴ礁に囲まれた浅い海)になっています。海岸付近の開発や埋め立てによってイノーが埋めてられ、浦添市ではカーミージー周辺にしか自然海岸は残っていません。そのため、とても貴重な風景となっています。

戦前のカーミージーは子供たちが遊ぶ場所であり、人々に海の恵みを与えてくれる祈りの場でした。しかし、戦後は米軍の占領下となり、カーミージーがある西海岸一帯は米軍基地施設で覆われてしまい、地元の人々から遠ざかるかたちとなってしまいました。ただし、カーミージー周辺はアクセスできたようです。
2005年に西海岸開発計画が出される中、地元の港川自治会の活動によってカーミージー周辺の重要性が見直されることになりました。
カーミージー周辺は浅く平坦な礁池があり、小さな子供でも比較的安全に自然観察を行うことができます。そこで、カーミージーが自然体験や環境学習の場として活用されるようになり、こうした活動のおかげでカーミージー付近は開発されることなく保存されることになったそうです。
一方で、貝や魚の乱獲によってカーミージー付近の生態系は変化しており、現在は生物を含めた保全活動が行われています。

【参考URL】「里浜カーミージーを保全しながら活用するための
ガイドライン」:カーミージーの海の環境保全に取り組むうらそえ里浜ネットワーク実行委員会が作成した保全のためのガイドライン。 https://www.shikatani.net/kamiji/guideline.html

カーミージー周辺での環境学習や生態系の調査についても詳しく紹介されている。https://www.shikatani.net/wp/minatogawa/teitenall/biao_zhi.html

最近、市が拝所整備を行い、コンクリート舗装したために昔のような風情がちょっとなくなってしまいました。でも、海岸部分は本来の浦添の自然の風景を満喫することができる貴重な場所です。

カーミージーは、自然海岸なので、人工的なビーチのようにビーチパーティや海水浴客でにぎわう場所ではありません。貴重な自然海岸をこれからも大切にしていきたいです。

カーミージー:
浦添市港川にある自然の岩礁。那覇空港から約10キロ。
なお、「浦添八景」とは未来に残したい浦添市の原風景として、浦添市が選定した場所のことを言う。

担当:金城、仲地(十)